2026.04.28
鋳物屋の世界には、ある不思議な伝説がある。 「電気炉の前が、一番落ち着く」という説だ。
常識的に考えれば、そこは千数百度の猛熱が渦巻く極限地帯。落ち着くどころか、一刻も早く離れたくなる場所のはずだ。だが、私は確信している。
あれは、本当だ。

電気炉を覗き込む。 そこにあるのは、ドロドロに溶け、黄金色に輝くステンレスの海だ。
鋳造のあらゆる工程はどれも魅力的で、素晴らしい。だが、この電気炉の前だけは別格だ。なんと言えばいいのか……ここは私にとって、究極の「オアシス」なのだ。
もちろん、凄まじい熱を帯びている。防具越しでも肌を焼くような感覚はある。 しかし、圧倒的な熱量と、美しく、かつ凶暴なまでの温度を前にすると、人間は不思議な状態に陥る。「身を守らなければ」という生存本能よりも、「気持ちいい」という快感が先行してしまうのだ。
脳の回路が、その熱に焼き切られるのではなく、共鳴し始めるような感覚。 この光り輝く液体の中に、すべての答えがあるような気がしてくる。
この恍惚感、そして「電気炉前オアシス説」。 これは、日々ステンレスと格闘し、金属の鼓動を聴き続けている鋳物屋の男たちにだけ許された、禁断の感覚かもしれない。
決して真似をしてはいけない。ここは選ばれし者だけが立てる、文字通りの「熱戦場」なのだから。
福岡、韓国、大阪……と世界を歩き、様々な刺激を受けてきた(4月17日のブログ)。 だが、結局のところ、私の原点はここにある。 この電気炉から溢れ出すエネルギーこそが、ハンドビームの、そして福山ステンレスの「魂」そのものなのだ。
溶けたステンレスに魅了され、その熱に己を焦がす。 この熱狂がある限り、私はどこまでも走っていける。
さあ、4月も残りわずか。 電気炉でチャージしたこの爆発的な熱量を、すべて仕事へとぶつけていくぞ! 黄金の精神は、この炉の中で、今もなお激しく燃え盛っている。