2026.03.07
今日は、大切な方へ向けて直筆の手紙を書くことにした。 「さて、何で書こうか」と考えたとき、真っ先に頭に閃いたのが、引き出しの奥で出番を待っている「彼」の存在だった。

私の机の中で、ずっと大切に保管されていたガラスペン。 非常に繊細な道具ゆえ、普段は厳重にクッション材に包まれている。そっと、まるで宝物を掘り起こすように慎重に包みをほどいていく。姿を現したその瞬間、「やっと会えたね」と心の中で声をかけた。
長い間眠っていたはずなのに、その透明な輝きは全く変わっていない。光を透過して机の上に落ちる影さえも美しい。インクを吸わせるその時を今か今かと待っているような佇まいに、あえて「もうしばらく眺めていようかな」と意地悪をしたくなるほど、その姿に見惚れてしまった。
いよいよインク瓶の蓋を開ける。 ガラスのペン先がインクを吸い上げ、溝に色が満ちていく。この瞬間は、何度見ても飽きることがない。
ペンを紙に落とすと、独特のカリカリとした感触と共に、鮮やかな言葉が紡ぎ出される。しかし、ここで一つ告白しなければならない。久しぶりに握ったガラスペンの繊細さと、「失敗できない」という直筆ならではの重みに、実は手がプルプルと震えていたことを……。
普段は現場で汗を流し、スピード感を持って決断を下す毎日。 けれど、こうして静かに座り、一文字ずつ丁寧に筆を進める時間は、私にとって欠かせない「心の調律」だ。手が震えるほどの緊張感は、それだけ相手のことを想っている証拠かもしれない。
書き終えた後の、少しの疲労感と大きな充足感。 ガラスペンはまた、次の出番まで大切にクッション材の中へと戻っていく。
たまには良いものだ。 震える手で、今の自分の「温度」を紙に残すことも。