2025.10.31
10月31日。世間がカボチャや仮装で浮き足立つ中、僕は佐賀の地で、全く別種の「非日常」と格闘していた。そう、これは僕の、佐賀への愛が試される、ちょっと手強い冒険の物語だ。
今回の出張のクライマックスは、佐賀バルーンフェスタ。 去年、台風の影響で無念の中止となり、今年こそはと固く誓ったリベンジマッチのはずだった。

しかし、無情にも空から降り注ぐのは、小雨。 会場に響いたのは、「本日のフライトは中止」という、悪夢のようなアナウンスだった。 「ま、まさかの2年連続……!」 どうやら、佐賀の空の神様は、僕にもう一年この地へ通う口実を与えてくれたらしい。他の開催日は無事に飛んだと聞いて、嬉しさと悔しさが入り混じる。つくづく、一筋縄ではいかない。
だが、僕の佐賀愛はそんなことでは揺るがない。 気を取り直し、もう一つの大切なミッション、「100名城スタンプラリー」へと向かった。

久留米城(福岡)、そして基肄城(佐賀)。 スタンプ帳に「2025年10月31日」の日付が刻まれる。この確かな「証」が、僕の心をじんわりと満たしていく。 ふとスタンプ帳を見返すと、佐賀県の城は、残すところあと1城となっていた。 「ああ、それだけ僕は、佐賀に通っているんだな」 バルーンには2年連続でフラれたが、このスタンプ帳こそが、僕がこの地と築いてきたご縁の軌跡だ。その事実に気づいた瞬間、理屈抜きに「僕は、佐賀が好きなんだ」という実感が、腹の底から湧き上がってきた。
そして、その「腹」を満たすべく、僕は旅のラスボスとも言うべき、あの伝説の店へと向かった。 「牧のうどん」だ。

噂には聞いていた。「ここのうどんは、減らない」と。 だが、テーブルに出された瞬間、僕は悟った。これは「減らない」んじゃない。「増えている」んだ、と。 熱々の出汁を吸い続ける麺。すすっても、すすっても、一向にゴールが見えない。 「本当に、食べ終わるのだろうか…」 僕は、目の前のごぼ天うどんとカシワ飯を前に、静かに「覚悟」を決めた。これは昼食ではない。佐賀の愛が試される、最終試練なのだと。
バルーンには2年連続でフラれ、うどんには物理的な挑戦状を叩きつけられる。 いろんなことが起こりすぎた、濃密すぎる佐賀出張だった。
でも、不思議だ。 こんなにも計画通りにいかないのに、心の底から満たされている。 結局のところ、僕は、この手強さも含めて、佐賀という土地が愛おしくてたまらないのだ。
ありがとう、佐賀。 また来年、今度こそあの空で会おう。そして、うどんとも、また格闘しよう。