2025.10.28
旅は、時に僕たちの想像を遥かに超えた「何か」を、容赦なく突きつけてくる。10月28日、火曜日。僕は今日、北九州の地から始まった一日が、これほどまでに魂を揺さぶる旅路になるとは、予想だにしていなかった。

一日の始まりは、いつもの北九州のホテルでの朝食から。 この見慣れたトレイを前にすると、僕はいつも、ある一つの「思い」を寄せる。それは、僕だけの、誰にも明かさない秘密の誓いのようなものだ。この地に通い続ける理由、ここで成し遂げたいこと。その決意を、一口一口、静かに噛み締める。この朝食は、僕にとっての神聖な儀式であり、戦いへの出陣式なのだ。
その熱い誓いを胸に、僕は今日、関門を越えて山口県へと車を走らせた。 向かった先は、「西の伊勢」とも称される、山口大神宮。

一歩、また一歩と参道を進み、その神域に足を踏み入れた瞬間だった。 「……すごい」 言葉を失った。いや、言葉という人間のちっぽけな物差しが、全く役に立たなくなった。 空の青さ、木々の深さ、建物の荘厳さ。その全てから放たれる圧倒的なエネルギーが、全身を包み込み、ねじ伏せてくるかのようだ。
「瞬きを忘れるとは、こんな状態を言うのだろう」
僕はただ、そこに立ち尽くすしかなかった。 どれほどの時が経っただろうか。その圧倒的な気の中で、僕はふと、何かに導かれるように、脇の小道へと足を踏み出していた。

まるで「こちらへおいで」と、誘われているかのようだった。 理屈じゃない。僕の足が、僕の意志とは関係なく、そこへ向かうのだ。 木漏れ日の中に静かに鎮座する、石の神様。 「素晴らしい…」 ただ、その一言だった。僕が今、この瞬間に、この場所へ導かれたこと。そのご縁の不思議さと尊さに、ただただ感謝が込み上げてくる。「お会いできて、光栄です」。そう心の中で深く一礼した。
神域のエネルギーにすっかり満たされた僕は、まるでご褒美を与えられるかのように、一軒のラーメン屋へとたどり着いた。

正直、何の情報もなかった。だが、一口スープをすすった瞬間、またしても僕の思考は停止した。 レンゲが止まらない。 美味しい。そんな陳腐な言葉ではない。 「美味しいと思う意識」そのものが、この圧倒的な旨味の前に吹き飛んでいた。なぜだ?どうしてこんなに美味いんだ? 考えるな、感じろ。 夢中でスープをすくい、麺をすする。ここは、間違いなく「美味しい」!
朝、北九州で立てた熱い誓い。 昼、山口大神宮で受けた、魂が洗われるほどのエネルギー。 そして、旅の終わりに、理屈抜きの「美味さ」という形で示された、この地からの歓迎。
ありがとう、北九州。僕の決意の場所よ。 ありがとう、山口。僕に計り知れない力をくれた神域よ。 このご縁を、僕は必ず未来へ繋いでみせる。 そう固く誓いながら、最後の一滴までスープを飲み干した。