2025.10.22
あれほどまでに響き渡っていた重機の音、泥にまみれて汗を流す職人さんたちの姿。 京都の熱から戻った僕を迎えたのは、そのすべてがふっつりと消えた、静かな裏山の景色だった。
完了間近のその場所は、あまりにも静かで、がらんとしている。 主役たちを失った舞台のように、どこか寂しさを感じてしまうほどだ。人間とは勝手なもので、あれほど騒がしいと思っていた音が消えると、途端に物足りなくなる。
だが、僕は知っている。 これは終わりじゃない。 聞こえない、見えない、その代わり。そこには、今まで存在しなかった、まっさらな景色が広がっている。これは、騒音と喧騒が創り上げた「整地された夢」そのものだ。この静かなキャンバスに、これからどんな未来図を描いていこうか。
そんなことを考えていると、夜がまた、別の「粋」を運んできてくれた。 今夜の打ち合わせ会場は、背筋が伸びるような、カウンターの寿司屋だ。
僕たちは、自分の熱い「思い」を「ネタ」にして語り合う。 その流れが、まるで寿司のコースそのものなのが、また面白い。
最初は、白身やこの美しい光り物のように、あっさりとした世間話や近況報告から入る。互いの呼吸を整え、場の空気を作っていく。 そして、中盤から後半になるにつれて、話は核心へ。まるで煮詰められたツメや、濃厚なウニのように、僕らの話も「味」が濃くなっていく。
互いの本音が飛び交い、未来へのビジョンが磨かれていく。このピリリとした緊張感と、口の中でほどけるシャリの一体感がたまらない。
美しく整地された夢の土台と、濃密に練り上げられた未来の計画。 昼も夜も、やるべきことはシンプルだ。
「いいね、今夜も」
カウンターの向こうで頷く大将の顔と、目の前の仲間の顔が重なって見えた、粋な夜だった。