2025.10.09
人生は時に、想像もしなかった舞台を用意してくれる。挑戦という名のスポットライトが、不意に自分を照らし出す瞬間がある。僕の前に現れたのは、福山大学の教壇という、まばゆい光が満ちるステージでした。
広く、静かな階段教室。これから未来を担う学生たちで埋め尽くされるこの場所で、経営者として講義を行う。いただいた素晴らしいご縁に感謝の気持ちで胸が熱くなる一方で、経験したことのないほどの緊張が全身を駆け巡っていました。
演台に置かれたマイクの冷たさが、やけにリアルに感じられます。僕の言葉は、彼らの心にどう響くのだろう。どんな未来の種を蒔くことができるのだろう。その責任の重さと期待が入り混じり、心臓の音だけがやけに大きく聞こえていました。
そして、開始まであと数分。
僕は腕を組み、深く息を吸い込みました。緊張で逃げ出しそうになる自分を鼓舞し、覚悟を決める。「伝えよう。僕がこれまで歩んできた道のりを、ありのままの言葉で」。
いざ始まると、案の定、極度の緊張から用意していた大切なエピソードが一つ、頭から完全に吹き飛んでしまいました。「まずい!」と一瞬、血の気が引きましたが、不思議なものです。そのハプニングのおかげで、かえって話のテンポが良くなり、結果的にきっちり時間通りに収まったのです。
何より僕の心を支えてくれたのは、学生たちの真剣な眼差しでした。静かに、しかし力強く向けられるその視線から、「何かを吸収したい」という純粋なエネルギーがひしひしと伝わってきます。彼らのその眼差しがあったから、僕は最後まで自分の言葉を紡ぐことができたのだと思います。
講義を終えた今、心にあるのは大きな安堵と、それ以上に大きな感謝です。
今回の経験は、僕が彼らに何かを教えるというよりも、むしろ彼らのひたむきな姿から、僕自身が経営者として、一人の男としてどうあるべきかを改めて教えられた、かけがえのない時間でした。
彼らという若い力の道標となれるよう、これからも自分を磨き続ける。
そう固く誓った、実りの秋の一日となりました。