2025.09.18
旅から戻ると、見慣れたはずの日常が、ほんの少しだけ違って見えることがあります。それは、自分自身の心に変化があったからなのか、それとも、意識していなかった世界の側面に、ふと気づかされたからなのか。今日は、そんな「視点を変える」ことの面白さを、身近な風景の中に再発見した一日でした。
昨日の夜、車を走らせていると、サイドミラーの中にライトアップされた福山城が浮かび上がりました。肉眼で直接見上げる城も雄大ですが、鏡という一枚のフィルター、いわば「ワンクッション」を置いて見る城の姿は、また格別な趣があります。それはまるで、額縁に収められた一枚の絵画のよう。現実の風景でありながら、どこか幻想的で、物語性を帯びて見えてくるから不思議です。同じ対象でも、見方一つで感じ方がこれほど変わる。人間の心とは、実に面白い機能を持っているものだと、改めて感じ入りました。
そして今日。会社の裏山では、いつものように工事が進められています。その現場を眺めるのが、すっかり私の日課です。職人さんたちの無駄のない動き、寸分の狂いなく大地を削り、形作っていく重機の精度。そこには、日々の鍛錬に裏打ちされたプロの技が光ります。その真摯な仕事ぶりは、業種は違えど、自分の仕事に対する姿勢にも良い刺激を与えてくれる、最高の教材です。
夕方になると、空からぽつりぽつりと雨が落ちてきました。すると、それまで土埃を上げていた山肌が、雨に濡れてしっとりとした表情に変わります。むき出しになった土の色が深まり、艶を帯びて、妙に綺麗に見えたのです。それは、雨という自然のフィルターがもたらした、予期せぬ美しさの発見でした。普段はただの工事現場として見ていた場所が、雨粒に濡れるだけで、こんなにも情緒的な風景に変わる。ここでもまた、視点を変えることの面白さを感じずにはいられませんでした。
鏡に映った城、プロの仕事への尊敬の眼差し、そして雨に濡れた山肌の美しさ。日常の中には、まだまだ私たちの知らない景色が隠されています。少しだけ視点をずらしたり、ワンクッション置いてみたりすることで、世界はもっと豊かに、もっと面白く見えてくる。そんなささやかな真理に気づかされた、雨上がりの夕暮れでした。