2025.09.14
私たちの日常は、目に見えるもので溢れていますが、本当に心を豊かにしてくれるのは、目に見えない「何か」を感じ取る瞬間なのかもしれません。賑やかな街角に潜む静寂や、広大な空に浮かぶ偶然の奇跡。それは、私たちが世界をどういう視点で見るかにかかっています。今日は、そんな自分自身の「感覚」というレンズを通して、世界の新しい側面に出会えた一日でした。
週末の尾道。商店街は多くの観光客で賑わい、活気に満ちています。誰もが同じ方向に歩き、同じものを目指しているかのような人の流れ。しかし、ふと視線を横にずらすと、そこにはまるで別の時間が流れる路地裏の入り口が、静かに佇んでいました。一歩足を踏み入れれば、商店街の喧騒が嘘のように遠のき、古いポスターが貼られた壁や、生活の気配が染み込んだ建物の質感が、懐かしい物語を語りかけてくるようです。ここは、街が持つ「余白」のような場所。効率や目的から解放された、ただ時間だけがゆっくりと流れる空間の魅力に、私は完全に心を奪われ、思わず足を止めてしまいました。
路地の持つ独特の余韻に浸りながら再び歩き出し、ふと空を見上げると、そこにはもう一つの発見が待っていました。流れる雲が描き出したその形は、まるで一頭の竜が、青空の海を悠々と泳いでいるかのよう。もちろん、科学的に雲の形がどれほど竜に近いかを分析することに意味はありません。面白かったのは、その雲を見た瞬間に、何の疑いもなく「あ、竜だ」と思えた、自分自身の感覚そのものでした。子供の頃に誰もが持っていたような、自由な想像力の翼。大人になるにつれて、現実という名の檻に閉じ込めてしまいがちなその感覚が、まだ自分の中にしっかりと息づいている。そのことが、なんだか無性に嬉しかったのです。この世界を何倍も面白くしてくれる魔法のレンズを、これからもずっと大切に磨き続けていこう。空の竜は、私にそう教えてくれているようでした。
賑わいの中に見つけた静かな路地。ありふれた空の中に見つけた壮大な物語。どちらも、ほんの少し視点を変え、自分の感覚を信じることで出会えた宝物です。世界は元々そこにあるけれど、そこにどんな意味や彩りを見出すかは、私たち一人ひとりの心に委ねられている。そんな当たり前で、とても大切なことを再確認できた、秋の空気が心地よい一日でした