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鋳物屋365日ブログ2025 ~その256~ 日常の視点が変わる時 – 変化への期待と、味わうことの深さ

2025.09.10

私たちの周りでは、日々さまざまな物事が動いています。見慣れた風景が少しずつ姿を変え、食卓には季節や土地の恵みが並びます。そんな日常の断片に少しだけ深く目を向けてみると、そこには未来への期待や、生命への静かな感謝が満ちていることに気づかされます。会社の裏山の変化から夜の会食での一期一会まで、そんな発見に満ちた一日を綴ります。

まずは日中のことです。いつも目にしている会社の裏山が、現在進行形の工事によってその表情を刻々と変えています。安全対策のための擁壁工事なのですが、その進捗を眺めていると、一つの可能性が目の前に現れました。これまでただの斜面だった場所に真新しいコンクリートの壁が築かれ、その上部には、思いがけず広々としたフラットなスペースが生まれていたのです。無機質な工事現場の一角にできたその平らな空間は、私には未来を描くための新しいキャンバスのように見えました。社員がほっと一息つけるような緑豊かな休憩場所にしたり、小さなハーブ園を作ってみたり。このスペースをどう活かそうか、そんな想像を巡らせるだけで、無機質だった風景が、温かい期待感に満ちた場所に変わっていくのを感じました。

夜は、素晴らしい会食の機会に恵まれました。その席で、私の味覚は実に贅沢な問いを投げかけられました。北海道産と広島県産、二つの産地のウニの食べ比べです。お皿の上に並んだ鮮やかな二つのオレンジ色は、それぞれの海が育んだ物語を秘めているようでした。片や、北の厳しい海流に揉まれて育ったであろう、濃厚でクリーミーな甘みが舌の上でとろける北海道のウニ。もう一方は、穏やかな瀬戸内の恵みを受けて育ったであろう、繊細できめ細やかな旨味がすっと広がる広島のウニ。「どちらが美味しいか」という問いは、あまりに短絡的で、野暮なものに思えました。これは優劣ではなく、それぞれの風土が織りなす「個性の違い」そのものを楽しむもの。味覚を通じて日本列島の豊かさに触れる、そんな奥深い体験でした。

そして、もう一皿、心に深く刻まれたのが車海老の塩焼きです。シンプルながらも、素材の良さが際立つ一品。運ばれてきた艶やかな紅色の海老は、絶妙な塩加減で香ばしく焼き上げられていました。勧められるままに、頭から殻ごと口に運びます。パリッとした殻の食感、その奥から現れるプリプリと弾けるような身の甘み。噛みしめるほどに、海老本来の旨味が口いっぱいに広がります。この瞬間、私は、自分が食物連鎖という大きな環の一部であることを改めて意識しました。他の生命の恵みをいただくことで、自らの生命が成り立っている。その厳粛な事実を前に、ただ「美味しい」という言葉だけでは表しきれない、静かで深い感謝の念が湧き上がってきました。

会社の裏山に見出した新しい可能性。二つのウニが教えてくれた多様性の豊かさ。そして車海老から感じた生命への感謝。一見バラバラに見えるこれらの出来事は、「日常の中にこそ、世界を深く知るヒントが隠されている」ということを教えてくれます。変化に気づき、違いを味わい、そして感謝する。そんな心の動きを大切に、これからも日々を丁寧に過ごしていきたいと、改めて感じさせられた一日でした。