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鋳物屋365日ブログ2025 ~その254~ 同じ虹を見て、渋滞を抜け、月が迎えてくれた夜 

2025.09.08

仕事の詰まった出張を終え、慣れない土地から自宅へと車を走らせる帰り道は、いつも少し特別な時間だ。高揚感と疲労感が入り混じり、窓の外を流れる景色を見ながら、様々な思いが頭を駆け巡る。今日の福岡からの帰り道も、忘れられない光景の連続だった。

夕暮れが迫る、大宰府の近くだっただろうか。知らない街の、見慣れない道を走っていると、さっきまで降っていた雨が嘘のように上がり、空に淡い光の架け橋がかかった。思わず「あ、虹だ」と声が漏れる。

人々が家路につき、街が賑わいを取り戻す時間帯。この美しい七色のアーチを、今、一体どれくらいの人が見上げているのだろうか。この街で暮らす家族、買い物帰りの人、そして私と同じように車を走らせている誰か。それぞれ違う場所で、違う日常を送りながら、ほんのひととき、同じ空、同じ虹を見ている。そう思うと、見知らぬ街との距離が、ふっと縮まったような気がした。

そんな穏やかな気持ちで福岡を後にし、ひたすら東へ。ようやく「広島県」の標識が見え、安堵のため息をついたのも束の間、目の前の景色が一変した。トンネルの中にずらりと並ぶ、赤いテールランプの列。またしても、事故渋滞だ。

どういう訳か、最近の出張帰りはいつもこのパターン。そして、なぜか広島県に入ってから巻き込まれることが多い気がする。「大丈夫か、広島県…」。思わず心の中でツッコミを入れてしまうが、もちろん冗談ではない。誰かにとっては、大変な事態なのだ。どうか皆が無事でありますようにと願いながら、じりじりとしか進まない車の中で、ただひたすら時が過ぎるのを待つしかなかった。

長い渋滞を抜け、ようやく見慣れた我が家の駐車場に滑り込む。心身共に疲れ果てて車から降り、ふと空を見上げた。そこには、雲間から煌々と輝く月が浮かんでいた。まるで「お帰り、お疲れ様」と、その優しい光で私を照らしてくれているかのようだ。

静かな月の光を浴びながら、今回の出張をゆっくりと振り返る。大宰府で見た虹の美しさ、渋滞の中の焦りや疲労感。そして何より、福岡で得られた新しいご縁や学びに、心から感謝の気持ちが湧き上がってくる。

嬉しいことも、大変なことも、全て含めて一つの道のり。帰り着いた夜空の月は、そんな一日を静かに見守り、そして肯定してくれているようだった。