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鋳物屋365日ブログ2025 ~その229~芦田川花火大会

2025.08.15

夏の夜を彩る、芦田川の花火大会。 今年もこの季節がやってきた。辺りに集う誰もが、まだかまだかと空を見上げる、あの独特の一体感と高揚感。今夜は、私にとって特別な仲間たちと共に、この夜を分かち合う。

花火が始まる前の、マジックアワー。 西の空に残る夕日が雲を染め上げ、まるで巨大な龍のように、これから始まる光の祝祭をそわそわと心待ちにしているようだった。この美しくも、どこか荘厳な空の下、彼らがやってきた。

そこにいるのは、遠くフィリピンから夢を抱いてやってきた、福山ステンレス鋳工が誇るべき仲間たち。異国の地で技術を学び、日々たくましく成長していく彼らの姿は、私にとっても大きな刺激であり、そして誇りだ。日本の、福山の夏を象徴するこのイベントに、彼らは少年のような輝く目をしてやってきた。

その中の一人が、まるで宝物のように一枚のタオルを掲げてくれた。 『ハンドビーム』。 それは私たちが汗を流し、技術を磨き、協力会社様と共に立ち上げた溶接工場の、いわば「魂」の証だ。ただの記念品ではない。私たちが共に過ごした時間と、築き上げた仕事へのプライドが、そこには確かに織り込まれている。今もこうして大切に掲げてくれるその姿に、ファインダーを覗きながら、胸の奥がじんわりと熱くなった。

やがて、辺りが完全な闇に包まれたその時、祝祭の火ぶたが切って落とされる。 ヒュルル…と夜空を切り裂く音が響き、色とりどりの光の花が咲き乱れる。その美しさに、隣にいた実習生たちから「Wow!」「きれい!」と歓声が上がる。故郷の夜空を思い出しただろうか、それとも初めて見る日本の花火のスケールに圧倒されたのだろうか。目をキラキラと輝かせ、一心に空を見上げる彼らの横顔が、花火の光に照らされてとても印象的だった。

視界いっぱいに広がる純白の光のシャワーが、夜を真昼へと変える。ドン、という轟音が身体の芯に響き渡り、光の粒子がキラキラと降り注いでくる。その神々しいまでの光景に、先ほどまで歓声を上げていた彼らも、今はただ息をのみ、言葉を失って空を見上げていた。その目に映る感動は、万国共通なのだと知る。

夜空を彩る大輪の花、それを共に見上げた仲間たちの輝く笑顔、そして私たちの「誇り」が織り込まれた一枚のタオル。 それは単なる夏の夜の思い出ではない。国を超え、言葉を超えて、同じ時間と感動を分かち合った、私たちの絆の証として、これからもずっと心の中で輝き続けるだろう。