2024.11.26
最初は個体であるステンレスの板を手に持つところから始まる。
とても重量感があって、その板によっては鋭さもあり、とても冷たい。
何度もその鋭さで指先を切りながら、ステンレスと関わる時間を積み重ねていく。
指先の皮の下からにじみ出る血液をじっと見ながら実感する。金属を侮るな。
電気炉という場所が鋳物屋にはある。
とても神聖な場所とされているので、年末には綺麗に掃除した後にお酒を供える。
まぁ先代からの見様見真似ではあるが、それが嫌ではない。
年末が近付いてくるとお供え物は一通りは自分でそろえて、お供えを現場に任せる。
もうそんな事を意識してしまう時期なんだと思う今日この頃です。
写真の金属は流れ出たステンレス鋼です。
なんとも言えない生命エネルギーを出しているのが分かります。
同じステンレス鋼でも素材と言う形になり、数日するとお客様のもとへ出荷される。
しかし写真のステンレス鋼は素材にはなれず流れでてしまった、ただのステンレス鋼にすぎない。
同材質なのに、どうして役目が大きく変わるのだろうかと流れ凝固してしまったステンレス見て思うのです。
でも安心してほしい、必ず生まれ変わることが出来るのが鋳物屋なのである。
流れ出てしまったステンレス鋼は再溶解されて生まれかわろうと今か今かと温度を上げている。
鋳物は金属再生事業みたいなもんです。
今はただの流れ出たステンレス鋼だけど、再溶解したら素材として生まれ変わることが出来る。
流れ出たステンレス鋼は確実に凝固して動くことはないのだけれど、私はとてもエネルギーを感じ動いているように見えます。
だからこそ現場にこぼれたステンレスは一粒残らず回収して再生したいのです。
金属の活躍するステージに送り出すのが鋳物屋の使命かと私は思うのです。