社長ブログ

鋳物屋365日ブログ ~その306~

2024.11.03

前回鋳造方案についてご説明をさせていただきました。
特に「押湯」ついて長めに語ってしまいました。
押湯は鋳物作りにおいてい大切な鋳造方案ですので、これからもブログに登場すると思います。
本当にそう思っているので説明にも熱がこもってしまいます。お許しを。
さて今回ご紹介する鋳造方案は「押湯」が使えない場所に施す鋳造方案の一つです。
素材の形状により押湯が使えないことも多々あります。
写真の中に四角い部分がありますね、これは以前にも登場した「冷やし金」という方案です。
冷やし金とは、その部分を強制的に冷やして固める効果があります。
前回ご説明した固まる時間差で引け巣が出来る現状を、逆に利用して引け巣を防ぐ方案です。

今回メインでお伝えしたい鋳造方案は、冷やし金の隣から細い棒が出ているあの部分の方案です。
この鋳造方案は「イグルミ」という名前になります。漢字で書くと「鋳包み」と書きます。
どんな方案かというと、引け巣を作りたくない部分を狙って同材質の金属をその部分に設置して、その金属ごと鋳込むことをいいます。
写真の細い棒が飛び出ていますが、その先の素材側にはφ12で長さが30ミリ程度のステンレスが埋まっているのです。
そうする事でその部分を内面から固めることができ、引け巣を防ぐことが出来るのです。
冷やし金は表面から、イグルミは内面からという訳です。
人間の体で痛みをとるときで言うと、湿布とロキソニンみたいな役割の違いですかね。

ここからイグルミの処理の仕方です。
いったん細棒を除去して、さらに素材のイグルミ跡を掘りこみます。
そのままで仕上げてしまうと、流し込んだ金属とイグルミの境目が出ることがあります。
それを防ぐためにイグルミの後は歯の治療のように、いったん掘りこんで後から溶接で埋め戻すのです。
なかなか手間のかかる仕上げですが、これが欠陥をださないに繋がる大切な仕事になります。
いろんな形状がありますが、しっかりと鋳造方案を作りこんで良いステンレス鋳物を鋳込んできます。