2024.11.02
鋳造方案には以前にもご説明をしました「押湯」というものがあります。
押湯とは素材が収縮することによって発生する「引け巣」を防ぐものです。
金属は冷えて固まる時に縮まる性質を持っております。
ただし素材全体が均一に収縮しないので、早く固まるところ、遅れて固まるところが出来ます。
この固まる時間差により「引け巣」という穴が出来てしまうのです。
例えば想像してみてください。
サイコロ状の空間がある砂型に、溶けたステンレスを流し込みます。
一番上まで流し込みしばらく待つと周りから固まってきます。
周りはどんどん固まっていきますが、中央付近はまだ固まりません。
固まったところは収縮が止まります。
中央はまだ収縮しようとしていますが、周りは固まっている、でも中央はどんどん収縮していく。
中央の収縮が終わるころには中央に凹みが出来ている、この時間差が「引け巣」という現象を起こすのです。
なんと言葉で説明することは難しいですね。
自分では頭の中にその絵面が不可んでいるのですが、皆様には浮かんだのでしょうか。
さて最後に写真の解説です。
これはステンレス鋳物でケーシングという素材名です。
写真の中央付近にカーブ状で溝があるのですが、これには意味があるのです。
形状としては無い方が鋳物屋的には良いのですが、どうして必要かというと。
機械加工の効率の為です。
溝の前の段上を機械加工するのですが、溝まで加工した時に削れたステンレスが綺麗に取れるように溝を形として作っています。
仮に溝がない場合は、加工は出来るのですが、削れたステンレスが取れにくくなり加工で一手間かかってしまうのです。
形には意味があるのですね。
さて雨が続いておりますが、本日もしっかりとステンレス鋳物作りに力を注ぎたいと思います。