社長ブログ

鋳物屋365日ブログ ~その301~

2024.10.29

朱に燃ゆる鉱さいは、一瞬輝いてやがては黒い塊になる。
電気炉から出る鉱さい物をそんな眼差しで見ることは滅多にない。
昔は私も電気炉を担当していたので、電気炉の大変さは良く知っている。
綺麗に見える材料にも若干の表面不純物があるもので、それが湯が高温になると次第に湯面に浮いて出るのです。
朱の湯面に太陽の黒点のように。
温度が上昇してくると朱色から眩しい白色を含んだ朱になり、さらに温度があると眩しい白い湯になります。
一粒たりともスラグをつけたくないので、浮き上がったスラグを除滓材で絡めとって湯面を綺麗にするのが電気炉の楽しみでもあります。
とても不思議な感覚になるのが出湯前の湯には重たさを感じないのです。
溶けているとはいえ、相手はステンレスという金属です。かなりの重量があるのです。
しかし溶解していると重量を感じないという不思議な感覚になります。
1チャージ1チャージを丹精込めて確実に、適正な温度で鋳込みをしていきます。

話しは急に変わりますが、同じ丸い写真を撮ってもこちらは魚類です。
鋳物屋は昔から酒が好きで、昔は職人さんの洗礼を良く受けたものです。
まだ若かりし頃はお酒の味も分からずに流し込んでいました。
今思えばもっと料理の味を楽しみ酒をじっくり味わえばよかったと思います。
職人さんはもういなくなってしまったけど、その精神はちゃんと私は受け取っています。
本物を食べて明日への活力をつけて、常に良い仕事をするのです。
本日も職人さんの教えを守り、良いステンレス鋳物を鋳込んでいきます。